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2007年 07月 29日
オリヴィエ・ジュリアン氏のワイン、“マ・ジュリアン”との出会いは8年ほど前だったか・・。初めて飲んだのは1996年産で、その頃は“カイユチ”と“デピエール”という2種の赤ワインがACコトー・デュ・ラングドックの表示でリリースされていた。 それよりさらに10年近く遡った頃の僕はワインを単にお酒の1種という程度の興味で飲んでいた時期で、僕を変えるきっかけになったのはあるボルドー産ワイン、特にメルロー種から造られたワインに惚れて毎月の給料の多くを注ぎ込んでひたすら飲み続けたものだ。 その後、メドックの優雅さを知り、ブルゴーニュの美しさに恋をして、他の産地のワインにもそれぞれに代え難い個性が備わっていることを知った。まだ世界的なブームになる前だったから、ラトゥールも5千円くらい(・・今からすると信じ難い値段だったなぁ・・)。それでも高いワインばかり飲んでいるわけにもいかず、ワインスペクテーター誌の旨安特集をチェックして1000円程度の掘り出し物ワインを探した。ちょうどその頃、MIDIワインという言葉が誌面で頻繁に使われていたのだが、それが地中海沿岸産ワインのことで、たいていはラングドック&ルーション産のことを指していた。はっきり言って質より量という意識でゴロゴロ造られた安物ワインで、アルコールは充実・果実味は貧弱・地味は皆無。そんな雑酒が多かったと記憶している。その後、ブーシュ・デュ・ローヌのトレヴァヨン、レローのドゥマ・ガサックといった量より質を重視して醸された偉大な南仏ワインと出会ったが、たとえば恋に落ちる・・というほどの経験にはならなかった。 前置きが長かったが・・つまり・・1996年産のマ・ジュリアンに出会って、たとえばその“恋に落ちた”わけだ。どこが好きなんだろう。すごく好きな相手のどこが好きなのか、考えれば考えるほど容易に挙げられない。ボルドーにはまりワイン道(?)を歩み始めた僕にとって、どこか上質なボルドーに共通する部分が感じられたのだ。ひんやりして、でも温かな土を感じさせる質感。けっして声高にならず、いつまでも淡々と話しかけてくる詩人のような語り口。濃厚なエキスを含んでいても甘くなく飲み飽きしない美しいバランス。飲み始めた瞬間よりその後のほうがより美味しい。・・あぁ、これがフィネスというものか・・上質なワインのみが持ちうる均整のとれた様子のことだ。 その1996年産を飲んで知った気持ちは今も変わることなく、現在手元にある2004年産で9年目になる。もちろん収穫年が進めば趣きは変わるし、同じ年号でも飲む時期によっても変わる。それでも期待を裏切られたことは一度もない。僕にとって他にそんなワインが、そんな作り手がいるだろうか・・。 好みは誰にもあり、評価も分かれるかもしれない。でも、このオリヴィエ・ジュリアン氏のワイン、一度飲んでみて欲しいと思う。僕と同じように恋に落ちて、毎年のリリースを待ち遠しく感じる方がいるはず。 “エタ・ダーム”というのはセカンド・ワイン的位置づけの赤で、このワインも当然のように美味だ。毎年ラベルは変更され、たとえば南仏という言葉を導き出すためのなぞなぞだったり、反戦を訴える詩だったり・・。2002年産は彼の愛娘が生まれてすぐに発した言葉にならない言葉を書き綴ったもの。 2007年 07月 14日
ずっと前、あるデパートのワイン売り場で耳にしたことがある。「シャブリの赤ちょうだい!」というお客さんのリクエストに店員は素っ気なく「シャブリは白ワインの産地で赤はありません」。 それは確かに正しいし、お客さんも知っている単語を使ってみただけかもしれないし、何かの勘違いだったかもしれない。でも話のもっていき方によってはこんな選択肢もある。それは・・“イランシィ”だ。 ブルゴーニュというとコート・ドール県のイメージが強いけれど、北部につながるヨンヌ県にも銘醸地がある。シャルドネ種を用いた辛口白ワインの産地“シャブリ地区”に隣接する、ソーヴィニヨン・ブラン種を用いる“サン・ブリ地区”、それに赤ワインで知られる“イランシィ地区”(白も認可)など。気候も土壌もコート・ドールとは異なるこの土地は、ロワール河の源流に続くあたりなので、ワイン生産地としてはブルゴーニュとロワールの間といえる位置。19世紀後半のフィロキセラ渦あたりまではパリやベルギーへと出荷される赤ワインの一大産地として栄えていたらしいから、今ここに旨い赤ワインがあっても不思議ではない。 今日のワインは“イランシィ2003年”。醸造家はヴァンサン・ドーヴィサ氏。入荷が決まった時は一瞬耳を疑った。シャブリの帝王ラヴノー氏と並び称される名匠で、この蔵元で赤が造られていると知らなかったからだ。(後でわかったことだが2003年が初リリースらしい。) 抜栓前の予想・・白の名匠が優れた赤を醸すとは限らないというのが通例で、いかに猛暑の年でも北に位置する産地に密度はさほど期待できないだろう・・ 抜栓後の驚き・・グラスに落ちた瞬間の液体の黒さはなんだ?しかも液面に小さな泡が立ち、その泡は数秒経って消えないし紫みのある厚みのある泡・・? 予想を完璧に裏切った。いい意味の驚きだ。口に含む、飲み干す。 ピノ・ノワール種100%で紫色のエッジ?その驚きは香りに味わいに続いた。深い紫色に熟したプラムにラヴェンダー、クレーム・ド・ヴァイオレットの甘く濃厚なアロマ。やはりすべて紫色だ。過熟したピノ・ノワールはシラーに似ると思うがこれが良い例。 味わいはまるでラム・レーズン。飲み始めに甘み、飲み終わりに苦味を残すところがやはり2003年のキャラか・・。酸度が低く、アフターがさらりと、やや締まりがないようにも思う。 しかし総合的に、これは良いワインだと思う。ブルゴーニュの真髄とはいえなくても、ブルゴーニュでしか、ピノ・ノワール種でしか表せない味が充分に出ている。飲み手を選ばず美味しいと言わせることができる、そんな潜在力があるワインだ。 1年半の樽熟を経ていて、香りに味にその影響は強く出ているが樹齢20年の葡萄が吸い上げる土中のミネラルや丁寧に育て上げられた果実のエキスは全く負けている感じはしない。名匠らしい巧みさがそこかしこに感じられる名品だと思う。 このワインは輸入元から入荷量が極めて少ないと聞いていたので検索してみたが・・ちょっとがっかり。このワインは4千円しないワインか?“白の名匠が造る赤”そんな話題性だけのワインだろうか?僕はワインを高く売りたいとは思わないし、安く売りたいとも思わない。もの相応の価格を付けられる価値基準をもち、時には売らないことの重要性も知るワイン屋でいたいと思う。 2007年 07月 01日
店でよく口にする言葉がある。「ワインは時に瞬間芸的な飲みもの」オレムス “マンドラス”。これまでも違う年号を何度か試してきて、そこそこ良い印象を持ってきたワインだ。でもうちの店では扱ってこなかった。理由は個性としていまいち地味なことと、その地味さをカバーできる適当な価格でもなかったこと。でも今回のはいい。価格はこの今の味としては安い。今の味・・というのは、それはワインの宿命、飲むタイミングでは美味しく飲めないこともある。このワインも今年を越すと果実味が落ち始め苦味を目立たせるようになるはず。まさに今が旬。瞬間芸が味わえるタイミング。 香りや味をあれこれ表現することの不毛さは感じるが、敢えてするなら・・。 *黄色みのある濃いめの色。これはハンガリーでも例外ない猛暑の年の影響?もしくは樽熟成によるもの? *旬の白桃、パイナップル、夏みかん、バニラ、ココナッツの香り。時間の経過でサフランにも似た華やかなミネラル香が立ち上がる。 *味わいは、とてもリッチ。でも濃すぎる感じはなくギリギリのいいとこで止まった凝縮度。酸味は丸く穏やかで苦味が少々。それがこのワインの旨味を引き締め後口をスッキリさせていて、全体にバランスがとれている。 ところで、これを飲んで思い出したワインがある。恐れ多いが、それは“パヴィヨン・ブラン・デュ・シャトー・マルゴー”。言わずと知れた銘醸マルゴーが生む白ワインだ。マルゴー・ブランにあってマンドラスにないものは、酸味のデリケートさと余韻の伸び、それと決定的な違いは気品と艶やかさ。いやこの違いが大きいんだけど、でもちょっと似た雰囲気があるから“メドックの貴婦人”を想像しながら飲んでみてほしいと思う。 それにしても今回のマンドラスは旨い。妻が晩ごはんに用意してくれていた料理の一つ、“鶏とアヴォカド、じゃがいものマスタード和え”これに完璧に合った。マスタードの粒々を噛んだ時に広がるバニラ香とアヴォカドのクリーミーさに見事に重なる。瞬間芸的ワインだけに偶然見つけた好相性だった。 2007年 06月 27日
近頃、出会うことが少なくなってきたクラシックなネッビオーロの、それも上物の味。 ワインを飲み始めた頃、その頃は学生だったから高いワインは買えなくて、それでも“王様のワイン、バローロ”を飲んでみたい好奇心は抑えられず、その弟分のバルバレスコを買ってみたことがあった。今でもはっきり覚えてるあの味は薄っぺらで酸っぱくて、喉を通すのが苦痛だった・・。 どうしてこんなにまずいんだろ・・。弟は出来が悪いのか・・。それとも飲むには僕の修行が足りないからか・・。それでも理解したいと思ってワイン入門の本を見直すとバルバレスコは飲む8時間前に抜栓とあったから、あらためて翌朝飲んでみた。うげー酸っぱさが増した!キノコ臭もしてるぅ!なんかやばい味! それでも僕にとって高価な買い物だったから捨てるに捨てられず頑張って飲み干して・・そのあと数年はバローロ、バルバレスコには手が出せなかった。いま考えたら不味かった理由はだいたい想像がつくし、飲み歴を積んだ今ではその原料葡萄ネッビオーロ種は僕の好きな品種で、“王様のワイン”という言葉もわかった気がしてる。 今日のワインはGHEMME。銘醸の多いピエモンテ州のDOCGでも地味な存在で、造り手はこの土地のワインを昔ながらのスタイルのまま現在に伝えるカンタルーポ。正式名称は“アンティキ・ヴィニェッティ・ディ・カンタルーポ”という長い名前で、文字通り古風な考え方の蔵元。若いうちは酸もタンニンも強めで味のバランスがとれないけれど8~10年寝かせるとじわじわ甘みが増してなんとも言えない味を出す。そんなのがいわば伝統的な味わいのワイン。この10数年で葡萄の栽培や収穫、醸造・熟成方法も変わってきて、早い時期から楽しめるネッビオーロも増えて、それでもいいんだけど・・そんな近頃のワインに心を動かされていない気もして。 カンタルーポを初めて飲んだのは1995年、ワインは1986年産だった。やっぱり酸っぱかった・・でもそれだけじゃなく奥ゆかしい甘みもあって、なにより例えにくいほどの複雑な香りを備え、その香りは喉を通り、胃に下った後も延々と余韻となって続いた。その頃愛飲していたモルト・ウイスキーとも似た厳しさと温かさを感じさせる素朴な味。今日開けた97年はその味にすごく近くて、なんとも旨い。懐かしさも手伝ってか感動的でさえあって思わず記事にしようと思った。(上の画像が1997年物、ラベルにはリリース年を表記) ![]() ちなみに今回同時に入手した2000年産も気になって開けたけれど、結果から言えば97年がいい。どちらもピエモンテの偉大な年だけど、2000年はよく言えばエレガント、はっきり言えば期待にそむく軽い仕上がり。(ミレニアム年だけに収量を上げた可能性もある?) ところで“ナターレ”はその名の通り毎年クリスマス用にカンタルーポが売り出すシリアル・ナンバー付き限定仕様のもので毎年異なるアート・ラベルが貼られる。中身は通常のキュヴェと変わらないらしいけど、以前飲んだ97年物とはちょっと違う気がした。(もっと旨い) 今回、ある輸入元が引いていた“ナターレ”が数本出てきたので即入手。手持ちに何本かあるので気になる方はお問い合わせ下さい。でも今年のクリスマスまでお渡しできません。なぜならあと半年で確実に美味しくなるから。熟成10年が満ちるまで、ここでしばらく落ち着かせます。 《追記》1997年産を数日あけては少しずつ飲み続け、今日7月14日に完飲した。それまで(冷蔵庫で保管)その間、少しずつ表情は変わるものの美味しくないと感じた日は一度もなかった。2~3日立つと強い甘みを表して山桃のようにフルーティーな味わいとなり、次第に甘みが落ち着いた頃には酸味が目立つようになったが飲み手を疲れさせるものではなくシガーの香りやヴァイオレット香がなんともネッビオーロで魅力的だった。今日はその酸味もおとなしくなりミネラルの旨味だけを残したあさっり柔らかな液体になっていた。香りには熟した無花果、キュンメル。口中に残るのは絹織物に似た独特な香り。しかし18日の間美味しさは維持され続けたこのワイン、やはり本物だった。良いものは状態を問わず旨い。普通のワインは最初から普通だ。 2007年 05月 24日
チャコリに続き、これも今の季節に飲みたい白ワイン。ポルトガルの“ヴィーニョ・ヴェルデ”のように、オーストリアで緑のワインと呼ばれ親しまれているグリューナーフェルトリーナー種を用いた辛口すっきりタイプ。キャップの色をグリーンにして、ラベルの内側にも黄緑を配色するあたり、なんともお洒落なルックス。そして・・香りも味もグリーン! ライムをかじったところ想像してみて! 条件反射的に唾液が出てきた・・。酸みがあって、ちょこっとほろ苦い? 青くて少し植物的な香りがある? そうそれそれ、その感じ。 プチプチ舌を刺激するとこもなんともフレッシュ。後口はシャープだけどちゃんと味を残してる。これはやばい。また飲みすぎるー。 ・・とそんな方にお薦めなのが、このハーフサイズ。上部にちょこっと“SINGLE”と書いてあるとこがなんだかカッコいい。独身の方、理由あって一人暮らしの方、一人で飲みたい方等にはちょうど良いサイズ。(フルボトルの方には何も書いてません。) 2006年カンプタール産、フレッド・ロイマー氏作。 # by jeroboam-wt | 2007-05-24 21:28
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